女優の藤原紀香さんは今だから、発信したいメッセージがあるという。自粛期間中、いくつかの気づきがあった。医療や社会活動を維持する職業に就いている人への深い感謝。エンタメもまた、社会に必要不可欠なものであるという確信。この経験を学びに──。そう彼女は明るく呼びかける。
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【前編/藤原紀香が気づいた俳優の意義「心底俳優をやっていてよかった」】より続く
藤原さんは2002年の日韓国際交流年に、親善大使に任命されて以来、団体を超えボランティア活動や国際支援活動にも積極的に関わっている。これまでアフガニスタンやカンボジア、東ティモール、ケニア、モザンビークなどを訪れ、多くのことを学んだそうだが、07年には赤十字広報特使となり、翌年サイクロン被害を受けたバングラデシュに日本からの支援物資を届けに訪問した時のことは特に印象的だ。
「現地の女性だけを集め本音を伺う機会を作ったんです。最初は誰もが『あれが欲しい』『これが大変だ』と、自分たちの窮状を訴えていました。でも、話し合いが終わる頃、一人の女性がこう言いました。『他の国の方にお金や物をいただいたりするだけじゃなく、今、自分たちが何を始めなければならないかを決めましょう』と。それを聞いていた赤十字のスタッフさんは涙ぐんでこうおっしゃいました。『紀香さん、ボランティアで一番大事なのは、支援物資を届けること以上に、現地の方が明日に向かって歩き始めようとする英気を養う、その手伝いをすることなんです。少しでも自立していこうとするその気持ちが芽生えた瞬間を今、見ることができました』と」
時を現在に戻そう。この春は、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、紀香さん自身も予定されていた仕事が次々にキャンセルになったという。
「自粛期間中は、いろんなことを感じました。未知なるウイルスの出現に何がどうなるか想像もできず、とても不安でした。医療、食品の販売や農業、電気、水道、ガス、運輸業や警察や消防の方々など、世の中を守り動かしてくださっている方への深い感謝の気持ちが生まれました。そして、人と人とのつながりが改めて大事だということが身に染みました。緊急事態宣言が解除され、世の中が少しずつ動き出しましたが、紛争、戦争、差別、エゴ、環境破壊など解除してはいけない自粛を書き出してみたり。コロナで世界がストップしたからこそ、気づけたことも多くあります」
かつて劇場に人々が集まった華やかな日々のことを思い出す。再開してもしばらくは元通りにならないかもしれない時代だ。