林:うそ! ヤな感じ!
ヤマザキ:私がシングルマザーで頑張ってるあいだに、向こうは財力のある日本人女性と結婚していたんですよ。しかもその女性が借金を全部返してくれたらしくて。
林:まあ! すごい話。でも何年かして、年下の美しいイタリア青年がプロポーズしてくれたんでしょう?
ヤマザキ:私が14歳でヨーロッパ一人旅をしたときに出会ったマルコじいさんというのがいて、母とは手紙のやりとりで仲良くなりました。マルコじいさんが亡くなった後も、その娘家族とうちの母はずっと付き合いがあって。母のすすめで、当時6歳だった子どもを連れて初めてマルコじいさんの娘家族の家に行ったら、そこにマルコじいさんの孫で、しかもこれが極度のローマオタクの大学生がいた。三日三晩ぶっちぎりで古代ローマの話をしたんです。
林:ええ、ええ。
ヤマザキ:彼、私が帰ったあとに、やっと自分の心を開放してしゃべりたいことをしゃべったと思ったとたんに、心筋炎という病気になって入院しちゃったんです。病院から震える声で電話かかってきて、「僕はあなたと一緒に暮らしたほうがいいと思うようになったので、結婚しませんか」って。当時、彼は21歳、私は35歳ですよ。
林:まあ、14歳差! 素敵!
ヤマザキ:この人、結婚がどういうものなのかわかってないなと思ったけど、経済的に養うとか養われるとか関係なく、共同生活という意味での結婚もありかなと思って、「いいよ」って。子どもとも仲良しになっていましたから。それに古代ローマの話をすると、私も楽しいし、表現への意欲も刺激されますし。
林:なんかすごいですね。
ヤマザキ:自分で語っててもウソを並べてるみたいな気持ちになってきますね(笑)。
(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)
※週刊朝日 2020年7月3日号より抜粋