仕事部屋のグッピーも水温があがってくると毎日のように稚魚を産む。水槽は八つもあり、どの水槽にも四、五百匹はいるから、さすがにこのままではパンクすると、水槽ひとつ分のグッピーをバケツに入れてテニスコートに持っていった。おばさんたちを集めて、「これ、飼うてくれへん? かわいいやろ」「わっ、糸くずみたいなのがいる」「それは稚魚。グッピーは卵胎生やから、お母さんが子供を産む」「でも手間がかかりそう」「一週間にいっぺん、半分ほど水換えをするだけでええねん」餌と水草をつけます、ご希望なら水槽も差しあげます──。
セールストークがよかったのか、六人のお客さんが手をあげてくれた。気の変わらないうちに、わたしはポリ袋にグッピーを分けて手渡した。あと一年もすると我がテニス同好会の家はグッピーだらけになるかもしれない。
ことほどさように、わたしは生き物の世話で忙しい。仕事部屋には三十匹ほどのサワガニもいるし、ヌマエビもいる。たまにアシダカグモを見るのは、ゴキブリがいるからだろう(アシダカグモはいかにも強そうで頼もしいし、ハエトリグモはかわいい)。オカメインコのマキは一日中、わたしのそばを離れず、夜はわたしの頭にとまって寝る。
わたしの出無精はコロナ禍のせいだけではない。
※週刊朝日 2020年7月3日号