黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する (写真=朝日新聞社)
黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する (写真=朝日新聞社)
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写真はイメージです(Getty Images)
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 ギャンブル好きで知られる直木賞作家・黒川博行氏の連載『出たとこ勝負』。今回は、出不精の黒川氏が自宅で世話する生き物について。

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 台所の出窓に、日が暮れるとヤモリが来る。ガラス越しに見るから、ヤモリはいつもこちらに腹を向けて虫を追っている。

 わたしはヤモリの性別が分かるようになった。尻尾の付け根が丸く膨らんでいるのがオスで、メスはその膨らみがなく、白い腹の中に少しピンクがかった楕円形の卵がうっすらと見える(長さは六、七ミリで二つ抱えている)。ネットで調べると、ヤモリは五月から八月、一度に二つの卵を産み、一カ月半から二カ月で孵化するとあった。

 台所のエアコンの穴(室内側はボードでふさいでクロスを張っている)に毎年、ムクドリが来て子育てをする。今年も五月の末に雛が生まれてジージーと餌をねだる声が聞こえはじめたが、その声が日増しに大きくなり、この数日はカサカサという音もまじるから、羽ばたきの練習をしているようだ。もうまもなく巣立ちだろう。わたしは巣を覗いたこともなければ、巣立った雛を見たこともないが、毎年忘れずにうちに来てくれるのはうれしい。

 一昨年の冬、屋根の軒まわりの改修と塗装をしたとき、家のまわりに足場を組んだから、わたしは足場に乗って樋の掃除をした。すると屋根瓦の下の五、六カ所に枯れ草の塊があった。まわりに小さい羽根も散らばっていた。スズメの巣だ。そうか、ここで巣立ったスズメが庭に降りてきて、おれが皿に入れた餌を食うてるんか──と、これもまたうれしかった。

 今年はスズメといっしょに、キジバトのつがいが毎日、餌台にやってくる。交代で餌を食べ、食べ終わると、それを待っていた二十羽ほどのスズメが降りてきてチュンチュンとにぎやかに食べはじめる。キジバトはスズメより警戒心が薄く、わたしが庭に出ても逃げることがない。

 池の金魚はオスがメスを追いかけてバシャバシャと産卵行動をしていたから、明日あたり、卵の付いた水草を選り分けて火鉢に入れよう。睡蓮鉢のメダカも腹に卵を抱えたのがいるから、別の鉢に移して放卵させないといけない。もうほんとに、この時節はすることが山ほどある。

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