「ネタを書いている芸人」のハライチ岩井(写真左)とオードリー若林(C)朝日新聞社
「ネタを書いている芸人」のハライチ岩井(写真左)とオードリー若林(C)朝日新聞社

 芸人が笑いを取るためにどんな努力をしているか、テレビに出たときに少しでも目立つためにどんなことを意識しているか、といったことは、もともとは人前で語るようなことではないと思われていた。

【写真】なぜか生き残っている芸人といえばこの人

 だが、ある時期から、テレビなどで芸人がそういったお笑いの専門的なことを赤裸々に語るようになった。それは恐らく『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「ひな壇芸人」という企画の頃から始まったことではないかと思う。「おしゃべりクソ野郎」の異名を取る当代随一のしゃべりたがり芸人である品川祐が、その風潮を作った先駆者である。それ以降、『アメトーーク!』以外の番組でも芸人が専門的なことを語る機会は増えたし、一般のお笑いファンや視聴者もそれを楽しむようになった。

 そんな風潮の中で、最近よく話題に上っているのが、お笑いコンビの中でネタを書く方と書かない方の間にある確執についてだ。通常、ネタを書く側が、書かない側に対して不平不満を持っていることを告白するというケースが多い。

 6月8日放送の『ACTION』(TBSラジオ)には、流れ星の瀧上伸一郎、コロコロチキチキペッパーズの西野創人、ゾフィーの上田航平という3人の「ネタ書いてる芸人」が出演。それぞれがネタを書かない相方に対する日頃の恨みをぶちまけた。この番組の6月29日放送回では、今度は彼らの相方である3人が出演して、「ネタ書いてない芸人」側の見解を述べる予定だという。

 また、6月23日放送の『あちこちオードリー』(テレビ東京系)でも、ハライチの岩井勇気とオードリーの若林正恭が、ネタを書いている側の立場として意気投合する場面があった。

 ここで大前提として述べておきたいのは、メディアの中で芸人が話している内容は、たとえ専門的なことであっても、一種のエンターテインメントとして話半分で楽しむものである、ということだ。ただ、その前提を踏まえたとしても、ネタを書く側が書かない側に対してある程度の不満を持っていることが多い、ということは言えそうだ。

 ネタ作りというのはお笑いコンビの活動の要となるものだ。芸人はネタをやるのが本来の仕事であり、テレビに出ている芸人たちもネタの面白さを評価されてチャンスをつかんでいる場合が多い。芸人にとってネタとは生命線とも言えるほど重要なものなのだ。

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら
次のページ
書いていない方がネタを得意気に語ることも