「おや?」と思って立ち止まる。そしてはじまる旅の迷路――。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界を歩き、食べ、見て、乗って悩む謎解き連載「旅をせんとや生まれけむ」。第28回は、東南アジアの麺類のテイクアウト事情について。
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さまざまな国の食堂に入ってきた。そこでテイクアウトが日常に溶け込んでいる光景を何回も見てきた。とくに東南アジアは。
日本は新型コロナウイルスの感染対策で、飲食店のテイクアウトが盛んになった。
テイクアウトといっても、ラーメンやそばなど汁もののテイクアウトは簡単ではないはずだ。タイでは麺類はビニール袋を駆使するスタイル。日本はどういう方法なのだろうか。ラーメンのテイクアウトを頼んでみた。
最寄りの駅に近いラーメン店に電話をかけた。頼んだのは一般的なラーメン。チャーシューとモヤシ、ノリをトッピングで頼んだ。
指定した時刻の少し前に、自転車でラーメン店に出向いた。しばらく待つと、中型のレジ袋に入ったラーメンを渡された。赤茶色のふた付きプラスチック容器にラーメンが入っていた。その上に小さい透明プラスチック容器に入ったトッピングが載っていた。
自転車のかごにレジ袋ごと入れて自宅へ。振動でスープがこぼれないだろうか。気を遣う。家に戻り、レジ袋からラーメンの入った容器やトッピングをとりだした。
味に変わりはなかった。が、麺を啜りながら、「タイに比べればずいぶんシンプル」と呟いてしまった。
タイでの麺類のテイクアウトは、圧倒的にビニール袋である。茹でた麺と具をビニール袋に入れ、スープはまた別のビニール袋に。しかしタイはこれでは終わらない。
麺屋さんのテーブルには、唐辛子、酢、砂糖、ナムプラーというタイの魚醤、砕いたピーナツなどが容器に入って置かれている。この調味料セットはクルワンプルーンとかクルワンポンと呼ばれる。客は出された麺に、そこから自分の好みの調味料を入れ、自分の味にして食べる。唐辛子、砂糖、ナムプラーは多くの人が入れる調味料だ。