東京五輪の1年延期はアスリートに、精神や体力に大きな影響を及ぼす。ハンドボール女子日本代表・池原綾香さんは、自身のコンディションに苦悩している。コロナ禍の不安や願いとは。AERA 2020年6月29日号でその思いを聞いた。
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ハンドボール女子日本代表の池原綾香は、東京五輪の1年延期に複雑な思いを抱える。
「できれば今夏にやってほしいという思いもありました。来年には30歳。体力的に落ちる部分が出てくるかもしれないし、選手生命は限られているので。ただ、去年右ひざの大ケガをして、復帰からあまり時間が経っていないことを考えれば、本番まであと1年猶予ができたとポジティブに捉えることもできます。それに、代表では私のほか、同級生の3人がちょうどケガをしてしまっていたので、延期になったことでまた一緒に戦いたい気持ちも強くあります」
かつては三重県鈴鹿市のクラブで働きながら競技を続けていた池原は、17年夏にハンドボール発祥の地とされるデンマークのニューコビン・ファルスターに移籍。同年には日本人として男女を通じて初めてEHF(欧州ハンドボール連盟)チャンピオンズリーグに出場するなど活躍してきた。新シーズンは、同国の強豪オーデンセへの移籍も勝ち取ったが、すべては東京五輪で飛躍するためだった。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、先が見えず不安が募る日々が続く。
「デンマークリーグはシーズン途中で打ち切り。3月半ばから約2カ月以上、体育館やジムが閉鎖され、実戦的な練習はほとんどできていません。直近の目標がなくなったなかモチベーションを保つ難しさは感じます。それに、こっちではコロナの世界的な終息は来年の秋になるかもしれないなんて噂もあったりして、そういう話を聞くとやっぱり心配にはなります」
シーズンが終わったタイミングで通常なら一時帰国するところ。だが、コロナ禍で様々なリスクがあることを考え、今夏の一時帰国は諦めた。
「そこは自分ではどうすることもできない部分。私自身は、日々の積み重ねが未来を変えていくと信じるだけ。とにかく、いまは東京五輪が来年開催されることを祈ってできることをやっていくだけかなと思います」
(スポーツライター・栗原正夫)
※AERA 2020年6月29日号