山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員
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写真はイメージ(GettyImages)
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 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「子宮頸がん」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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「子宮頸がんの一歩手前だと言われました‥。」親しい友人から送られてきたメッセージに衝撃を受けたのは、つい先日のことでした。

 彼女によると、子宮頸がん検診は毎年受けていたが、新型コロナウイルスの流行もあって、結果を聞きに行くために病院を受診することがなかなかできなかった。ようやく検診結果を聞きに行った矢先、担当の医師から「子宮頸がんの一歩手前です。手術が必要です。」と言われたといいます。

 子宮頸がんは子宮頸部に発生するがんであり、女性特有のがんの中では、乳がんに続いて世界で2番目に多い疾患です。20代後半から40代前後の女性が発病しやすく、マザーキラーとも言われています。

 子宮頸がんの原因は、高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)です。HPVには100種類以上の型があり、がんの原因になる高リスク型は少なくとも13種類あると言われています。このうち、HPV16型と18型の2種類が、子宮頸がんの原因の7割を占めています。実は近年、子宮頸がんだけでなく、肛門がんや中咽頭がんなどもHPV感染が関連していることが明らかになっています。

 HPVは主に性交渉によって感染しますが、ほとんどは免疫力により排除されます。しかしながら、子宮頸部を覆っている上皮が高リスク型のHPVに数年から十数年もの間、持続的に感染してしまうと、子宮頸部の病変は、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成・上皮内がん、微小浸潤扁平上皮がん、浸潤がんと段階的に前癌病変を経てがんになってしまうのです。

 冒頭でご紹介した彼女は、高度異形成・上皮内がんであったため、「子宮頸がんの一歩手前です」と言われました。しかしながら、子宮頸部異形成は自覚症状を示さないことが多く、子宮頸がん検診を受けなければ見つからないと言っても過言ではありません。彼女の場合、子宮頸がん検診を受けていたので、子宮頸がんの一歩手前で発見することができたのでした。

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HPVワクチンの有効性と安全性は?