■急激な症状は出ず、受診が遅れることも
そのほかの運動症状には、動きだすまでに時間がかかったり、歩く速度が遅くなったりする「運動緩慢」、筋肉が緊張しつづける「筋強剛」、姿勢を保ちにくく、転倒しやすくなる「姿勢保持障害」がある。姿勢保持障害は、病気が進行してから出現することが多い。関東中央病院脳神経内科の織茂智之医師はこう話す。
「パーキンソン病は、脳卒中などのように急激な症状が出るわけではありません。ふるえがない場合、『なんとなく右手が動かしにくい』『なんとなく動作が遅くなった』『パソコンのキーボードが打ちにくい気がする』といった程度の症状なので、脳神経内科への受診が遅れることがあります。特に若年性の場合は肩などの痛みから発生しやすく、整形外科を受診したり、マッサージや鍼灸などの施術を受けたりして、パーキンソン病と診断されるまでに時間がかかる傾向があります」
さらに、パーキンソン病の運動症状は、薬の副作用のほか、正常圧水頭症、変性疾患などほかの病気でも起きる。また、脳に形態学的な異常が起きるわけではないので、診断が難しい。パーキンソン病というと運動症状が主と考えられてきたが、非運動症状が注目されている。
重度の便秘や嗅覚の低下、うつ、眠っている間に大声を出したり暴れたりする「レム睡眠行動障害」などが高頻度の非運動症状だ。運動症状に加えてこうした非運動症状があると、パーキンソン病の可能性が高くなる。順天堂大学順天堂医院脳神経内科の大山彦光医師はこう話す。
「最近は、はじめに非運動症状が出現し、経過とともに運動症状が出現するのではないかと考えられています。国際的な学会の現在の診断基準では、運動症状に加えて、嗅覚の異常など非運動症状があるかどうかが、パーキンソン病か、それ以外の病気かを判断する目安になっています」