手足のふるえなどの症状がみられ、進行すると歩けなくなったり、認知機能の低下がみられたりすることがあるパーキンソン病。かつては不治の病と言われることもあったが、現在は医学の進歩で、長期にわたり通常の日常生活を送ることもできるようになってきた。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、薬物療法と運動療法について専門医に取材した。
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治療の基本は、薬物療法だ。パーキンソン病は、神経伝達物質の一つであるドパミンが減ることによって発症する。このため、治療では不足したドパミンを薬で補充することで、症状を軽くし、通常の日常生活を送れるようにする。関東中央病院脳神経内科の織茂智之医師はこう話す。
「別の病院で『パーキンソン病は不治の病』と言われて泣きながら来院する方もいます。けれども現在は薬物療法の進歩で、薬を適切に使いつつ、運動療法もおこなえば長期にわたって日常生活の質を保てて、天寿を全うできるのです」
パーキンソン病の治療薬にはさまざまな種類があるが、最も効果が高いのが「L-ドパ製剤」だ。L-ドパはドパミンに変化する一つ前の物質で、脳内でドパミンに変化する。ドパミンを補うことで、ふるえやこわばりなどの運動症状が改善され、スムーズにからだを動かせるようになる。ただし、あくまで症状に対する治療で、病気を根本的に治すわけではない。薬は生涯飲み続けることになる。
L-ドパを長期間服用していると、「ウェアリングオフ」といって薬が効いている時間が短くなる現象が起こりやすい。初期には1日3回の食後に服用すれば一日中効果が持続していたのが、治療期間が長くなると次に薬を飲むまで効果が持続しなくなるのだ。動きにくくなる、からだが重く感じるといった症状が出る。
この現象を解消するために薬の量を増やすと、「不随意運動(ジスキネジア)」といって、自分の意思とは関係なく、手足や首、肩などがくねくねと動く症状が出やすくなる。
「65歳未満の若い人は、ジスキネジアが早く出やすいと言われています。このため、若くて症状が軽い人は最初からL-ドパを使用せずに『ドパミンアゴニスト』、もしくは『モノアミン酸化酵素B(MAOB:マオビー)阻害薬』を使うことがあります」(織茂医師)
ドパミンアゴニストは、ドパミンを受け取る部分(ドパミン受容体)を刺激して、その働きを活性化する薬で、L-ドパに比べて薬効の持続時間が長く、ウェアリングオフが起きにくい。ただし、吐き気や食欲低下、眠気、突発性睡眠、めまい、幻覚など、副作用が起きやすい。