■治療薬の選択には時間をかけることも
ドパミンアゴニストより副作用が少なく、新しい種類の薬が次々と登場して注目されているのがMAOB阻害薬だ。脳内のドパミンが分解されて減少するのを抑える作用がある。症状が軽いうちはどちらかを単剤で使用し、それだけでは症状を抑えられなくなってきたら、L-ドパと併用する。併用することでL-ドパの量を減らせるので、副作用のジスキネジアを抑えることにもつながる。
順天堂大学順天堂医院脳神経内科の西川典子医師はこう話す。
「若い人であっても仕事に支障が出ないように確実に症状を抑えたいということであればL-ドパ、症状が出ているのが利き手ではなく日常生活に大きな支障がないということであればドパミンアゴニストかMAOB阻害薬、というように、症状や生活、年齢に合わせて薬を選択していきます」
治療薬を選択するために、生活状況や家族構成、仕事の内容など患者の情報を細かく知る必要があるので、初診は時間がかかる。
「難病と診断されれば誰でも不安を感じます。非運動症状の一つであるうつ症状によって不安を感じやすくもなっています。薬の副作用を心配している方もいます。しかしパーキンソン病は薬とは長い付き合いになるので、いい印象をもった状態で治療を開始することが肝心です。それが治療効果を左右することもあります。不安が強い方にはいきなり薬物治療をせず、まずは不安解消を優先する場合もあります」(西川医師)
同じ一人の患者でも、症状の変化やライフイベントに合わせて、薬の種類や組み合わせを変えていく。L-ドパ、ドパミンアゴニスト、MAOB阻害薬の3剤を基本に、副作用を抑えたり、基本の薬の効果を高めたりする「COMT阻害薬」「ドパミン遊離促進薬」など補助的な薬を組み合わせる。また、非運動症状はドパミンを補充する治療だけでは効果がない場合もあるので、それぞれの症状を改善する薬も処方する。
「パーキンソン病の薬物治療は複雑で、研究も進んでいるので、専門的な知識が必要です。治療の効果を感じられない場合などは、パーキンソン病を専門的に診ている脳神経内科医を一度受診してみてください」(同)