海は変化が激しい。穏やかだった海が急に荒れてくることもあるので、どんな時も注意が必要だ
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AERA 2020年7月6日号より
AERA 2020年7月6日号より

 海水浴などで心配なのが水難事故。今年は海に行く機会もないし……と油断していると、実はリスクが多く潜んでいる。近年、海に行く人が少なくなっているというデータもある。AERA 2020年7月6日号に掲載された記事で、海との上手な付き合い方について考える。

【グラフ】救助の原因をしらべたところ、人的要因の6割は…

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 今年の夏は、新型コロナウイルスの影響で、海水浴に行く機会は少ないかもしれない。だが、暑くなるとつい海に心惹かれる。そのとき、実は例年以上に注意が必要なのだ。

 今年は海で泳ぐと事故に遭いやすい状況にある。春からの自粛生活で体力も筋力も低下している。それに、今年は海の家を設置しない海水浴場も多い。例年のように、監視員やライフセーバーがいない状況が考えられ、ブイなどで安全に泳げる範囲を示していないケースもあるだろう。しかし、遊泳禁止でなければ海に入る人もいる。つまり、より海水浴で危険に遭遇するリスクが高まるのだ。

 ここ数年は、毎年約700人が水難事故で死亡している。しかも、海水浴客が年々減る一方で、海での死亡事故は横ばいなのだ。

 日本ライフセービング協会が救助の原因を調べたところ、人的要因の6割が泳力不足だという結果が出た。日本は世界でも珍しく、義務教育で水泳の授業を行っており、水泳教室に通う子どもも多い。それなのになぜ泳力不足が問題になるのだろうか。同協会で溺水防止救助救命本部長を務める石川仁憲さんはこう語る。

「海は足のつかないところもあり、水の中が見えないので、プールで泳げても不安を感じるものです。生物がいるのも海とプールの大きな違い。海水浴場でクラゲに刺されて救助される人も毎年とても多いです」

 日本では近年、着衣泳を授業で行うところもあるが、自然の中で泳ぐことを想定したカリキュラムになっていない。だから、自然の中でトラブルに遭ったときの対処法がわからないのだ。

 また、海では天候にも注意が必要だ。天気予報を事前にチェックし、天気が荒れそうなときには入らないというのは基本中の基本。ただし、天気がよくても注意が必要なときもある。たとえば太平洋上で台風が発生したけれど、まだ日本にはさほど接近せず、海岸付近は晴れている場合。このとき、遠くの台風の風によって発生する「うねり」と呼ばれる高い波が海岸に押し寄せてくることがある。

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