AIやクラウドが幅を利かせる一方で、人へのニーズは絶対になくならない、と話すのは経済評論家の加谷珪一さん。

「伝統工芸の職人さんやハンドメイド作家、美容師やデザイナーなど手を動かす技術を持つ人は、AI時代では圧倒的に有利です。芸術家でなくてもいい。米国では、ハンディマンと呼ばれる、壊れたベランダや家具などを修理する便利屋さんがネットに登録して、人気商売になっています。DIYが得意な人は、YouTubeで宣伝すればひっぱりだこかもしれません」

 日本でも、店を持たずにインスタグラムで宣伝をして出張カットで稼ぐ、カリスマ美容師がいるという。

「職業」ではなく、「職能」が重視される時代になった、とコンサルティングや技術・研究職の転職支援を手がけるアスタミューゼの執行役員の嶋崎真太郎さん。

 すべてがAIに奪われるのではなく、淘汰(とうた)されて少数精鋭になるイメージだ。AIだらけで無人の保育園や幼稚園も想像したくない。

 昨秋に運航終了したLCCのバニラエアの男性CAによるユニークなアナウンスがSNSで話題になった。

 土地の穴場に詳しい旅行ガイドやタクシー運転手など、根強いファンがつく人は生き残る。銀行マンがこう語る。

「世間話がしたくて銀行窓口に来るお金持ちの老人はたくさんいます。彼らにとって手数料はデイサービス利用料のようなものです」

 やはり、AIロボットより人とあいさつを交わしたり、話をしたい。得難い人材になるために、技能とコミュニケーション能力を磨き勉強を重ねる。それが生き残る道なのかもしれない。

週刊朝日  2020年7月17日号より抜粋

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