新型コロナウイルスの感染を巡り、さまざまな局面で重要な発言をしてきた専門家会議。だが、最近あっさりと「廃止」が表明された。発展的移行と言い直されたものの、背景に何があったのか。AERA 2020年7月13日号の記事を紹介する。
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「我々は専門家の立場で助言するだけですから、使い捨てなんです。そういう役割なので、善しあしの問題じゃなくそうなんです。それにしても、こちらから言うのもなんですが、もう少し敬意を払ってくれても良さそうなものではありましたよね」
専門家会議のメンバーの一人は、こう苦言を呈した。それは、担当大臣の西村康稔経済再生相に対してだった。
6月24日、国立感染症研究所長で専門家会議の座長を務める脇田隆字氏や、地域医療機能推進機構理事長で副座長の尾身茂氏らが組織の見直しを求めて開いていた記者会見の最中に、西村氏が別の場所であった記者会見で発表したのが、専門家会議の「廃止」だった。
新たな会議体ができることも同時に公表され、その点を記者に問われると尾身氏は「私はそれは知りません」と戸惑いの表情を見せた。
冒頭のメンバーは続ける。
「専門家会議に多くの国民が注目していたのも、それを参考に政治が政策を決めていったのも事実でしょう。そういう意味では、廃止にあたってこうしたやり方をされるのは、『背景に何かあるな』と思われても仕方ないですよね。西村大臣らしくもないな、とは思いました」
会見に批判が集中すると、4日後に再び会見を開いて「『廃止』という言葉が強すぎた。発展的に移行していく」(西村氏)と軌道修正している。
これまで、安倍晋三首相も政策決定にあたり専門家の知見を参考にするとたびたび言及していた。記者会見には尾身氏を同席させるほどだったのに、廃止の理由は、会議に法的な根拠がなく「位置づけが不安定であった」(西村氏)からだという。
いずれにせよ、今ある専門家会議はいったん解散する。なぜ今、このような事態に陥っているのだろうか。まず、会議の概要を確認しておきたい。