政府が専門家会議を設置したのは2月14日だった。感染症や公衆衛生を専門とする医師ら12人で構成する。医学的な助言を求められ、これまでに定期的に「見解」や「提言」を出してきた。繰り返し記者会見を開いては「三つの密」や「オーバーシュート」「新しい生活様式」など、印象的な言葉で国民に訴えかけてきた。
ただ、その一方で批判の矢面に立たされることにもなった。政治が責任を負うべきことまで、専門家会議に矛先が向けられたわけだ。政治評論家の有馬晴海氏は、今回の廃止表明についてこう考える。
「組み替えなければいけないという、政府の勝手な事情があったのではないでしょうか」
それはやはり、専門家会議からの情報発信についてだと、有馬さんは指摘する。情報発信のあり方については、本誌の取材に応じた脇田氏がこう説明した。
「最初に、この会議は『チャタムハウスルール』でいこうということに決めたのです。名前を出すことはしませんが、率直な意見交換で出した結論についてはそれぞれが自由に発信しても構わないということです」
メンバーは自由にテレビに出演し、メディアの取材を受けた。政府にとっては、発信される情報次第で国民のパニックにつながるというリスクになり、廃止に至ったのではないかと有馬氏は指摘するが、一方で専門家会議側の思いもこう察する。
「公表する事柄について政府側はどんどん丸めた形にしようとしますから、不満があったのではないでしょうか。しかし、例えば政府が『大したことない』と言っても、万が一のときは専門家会議に責任を押しつけるでしょう。専門家会議の先生方も嫌気が差していたはずです」
さらに、廃止の背景には安倍首相サイドと専門家会議の距離があるのではとの見方もある。医師で医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は分析をする。
「新型コロナの問題は、PCR検査に尽きます。最大の問題は、安倍首相をはじめとする官邸サイドも検査数を増やすように指示しているのに、現場の抵抗があったからか、増えなかったことにあります。これは、クーデターと一緒です」