治療薬についても、より合理的に病状に合わせて適量を用いることができます。けれども、その薬剤のほとんどは化学合成品であるだけに、副作用が少なからずあらわれます。

 私が専門とするがんの分野では、抗がん剤の副作用に辟易(へきえき)とします。もとより、抗がん剤はがん細胞とともに正常細胞も攻撃してしまうものですから、副作用が前提なのです。嘔吐(おうと)のために食べる楽しみを奪われる、頭髪が抜ける、肌がかさかさになる、倦怠感(けんたいかん)にさいなまれるなどします。

 私は長年、医療に携わってきて「医療とは、患者さんがたとえ病の中にあろうとも、人間としての尊厳を保ち続けるのをサポートするのが本分。治したり癒やしたりするのは方便にすぎない」と考えるようになりました。しかし西洋医学には、いまだに人間としての尊厳を引き裂くような治療法が存在しているのです。

 外科手術もそうです。最近は安全性が高まりましたが、いくら治療のためとはいえ、全身を切り刻むのはいかがなものでしょうか。私も昔は外科医で、それに全力を傾けていたのですが……。

 抗がん剤にしろ、外科手術にしろ、ずいぶん乱暴な治療法で、いつかは廃れるべきものだと思います。進歩しているように見えて西洋医学はまだまだ発展途上なのです。それを踏まえた上で、適切な治療法を選んでいくことが大切です。

週刊朝日  2020年7月17日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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