肥大した前立腺を小さくする目的で用いられる薬が、5α還元酵素阻害薬(一般名・デュタステリド)だ。前立腺の肥大にかかわる男性ホルモンの作用を抑制して、前立腺の増殖を抑える。即効性はないが、半年から1年の内服で、最大で約3割は小さくできるという。排尿症状が軽減されることのほかに、大きすぎて内視鏡による手術が難しい症例に事前に用いて、手術を可能にする目的でも使われる。男性ホルモンの作用を抑えることから、勃起障害や性欲減退などの副作用がある。
三つ目は、尿意切迫感、切迫性尿失禁など、過活動膀胱様症状の改善に用いられる抗コリン薬だ。α1ブロッカーやタダラフィルで症状の改善がみられない場合に用いられる。膀胱の過度な緊張をやわらげて症状を緩和する。
「抗コリン薬は、過活動膀胱様症状の改善効果は高いのですが、口渇や便秘、尿の出が悪くなるなどの副作用が強いため、慎重に投与する必要があります」(安部医師)
そのため、抗コリン薬の代わりに、β3作動薬を使うケースが増えていると桑原医師は話す。
「抗コリン薬に比べて副作用が少ないため、今後、過活動膀胱様症状に対する第一選択薬になるのではないかと考えます」
詳しいデータは出ていないが、前立腺肥大症患者の5割以上は、薬物療法で症状を軽減し、手術をせずに生涯を全うするという。
(文・別所文)
≪取材協力≫
NTT東日本関東病院 泌尿器科医長 前立腺センター長 安部光洋医師
長久保病院 理事長 桑原勝孝医師
※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より
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