実際、球磨川は過去に何度も大雨や台風氾濫を繰り返した。
最近では2011年6月、梅雨の大雨で川が氾濫し8戸が浸水した。戦後最大の被害が出たといわれたのは1965年7月、梅雨前線の停滞で降り続いた大雨で洪水が起き、人吉市や八代市で堤防が決壊し6人が死亡、約1万2800戸が浸水した。
しかし今回の豪雨は65年の水害を上回り、「過去最大級」だったとみられている。大雨をもたらしたのは、発達した積乱雲が帯状に連なる気象現象「線状降水帯」が原因だ。3年前の九州北部豪雨、2年前の西日本豪雨でも発生し、甚大な被害をもたらした。
■予測難しい線状降水帯
だが厄介なことに、線状降水帯は局地的な気象現象のため現状では発生の予測は難しい。河川工学が専門の京都大学の今本博健(ひろたけ)名誉教授は、こう説明する。
「今回の気象や水位のデータを解析したところ、線状降水帯が球磨川の下流から上流に移動したことが確認されました。つまり、雨域は下流から上流に移動し、一方で球磨川は上流から下流に流れていますから、球磨村や人吉市あたりで線状降水帯が降らせる大雨と川がちょうどぶつかり、周辺の水位の上昇につながったと考えられます」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2020年7月20日号より抜粋