水ぼうそうにかかったことがある人は、誰でも発症する可能性がある帯状疱疹。夏に患者数が増える傾向があるので、注意が必要だ。特に60~70代に多く、高齢者の増加によって増えている。
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その名のとおり、からだに帯状の水ぶくれを伴う発疹ができる帯状疱疹。発疹が出る数日前から、皮膚に痛みを感じることが多い。感覚神経がある部位ならどこでも発症する可能性があるが、腕や胸部、腹部、背部に出現しやすい。左右どちらかに出るのが特徴だ。
帯状疱疹は、60~70代に多く、患者数は近年増加傾向にある。
「帯状疱疹の増加には、主に三つの理由があると考えられます」
そう話すのは、奈良県立医科大学病院皮膚科の浅田秀夫医師だ。
「『高齢人口の増加』『免疫を抑制する薬剤が増えていること』『水痘患者の減少』です。日本の高齢化は進んでいるので、今後も増えていくことが予想できます」
帯状疱疹の原因は、「水痘・帯状疱疹ウイルス」の感染だ。10歳までに感染することがほとんどで、初めて感染したときには、水痘(水ぼうそう)として発症する。このときにウイルスは神経節にも運ばれて、潜伏感染する。そのウイルスがなんらかの原因で、再活性化して発症するのが、帯状疱疹だ。
水ぼうそうにかかったことがある人は、誰でも帯状疱疹になる可能性があるが、特にリスクが高いのが高齢者や抗がん剤治療中の人、関節リウマチなどの膠原病で免疫抑制薬を使用している人など、ウイルスに対する免疫力が低下している人だ。過労やストレスが引き金になることもある。
水ぼうそうにかかる子どもが減っていることも、帯状疱疹の増加に影響を及ぼしている。水ぼうそうは、水痘ワクチンの接種によって、予防できる。このワクチンは、2014年10月から、1~2歳児を対象に定期接種が開始されている。
「定期接種が開始されてから、水ぼうそうの子どもは激減しました。大人が水ぼうそうの子どもと接触すると、知らず知らずのうちに水痘ウイルスに感染し、ウイルスに対する免疫が増強して、帯状疱疹の発症が抑えられます。しかしその機会が減ると、免疫を維持しにくくなり、帯状疱疹を発症するリスクが高くなるのです」(浅田医師)