「信号場」をご存知だろうか。ちょっと不思議な名前を持つこの鉄道施設は、駅などと同じ停車場の一形態で、全国で170カ所以上を数える比較的メジャーな存在だ。具体的にどのような存在なのか、その実態に迫ってみよう。
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■駅でない停車場・信号場とは?
列車に乗っていると、駅でもないところで停車することがある。「はて、ダイヤの乱れでも起きたのかな?」と訝っていると、落ち着いた声で「列車行違いのため2分ほどお待ちください」などという車内放送が流れてくる。列車が信号場に停まったのである。
信号場をごく簡単に言い表わすと、「乗客の乗り降りができない停車場」ということになる。おもに列車の行違いや追越しなどのために設けられているため、停車理由のないときは当然のように通過してしまう。停車場の一種である駅に同様の役割を持つケースが多いが、信号場は駅とは異なり「時刻表」の本文や路線図には掲載されていない。したがって、相応の知識や乗車経験がなければその存在を意識しない人のほうが多いのではないだろうか。近年では「Gooleマップ」などWEB上の地図に表示されているケースもあるので、存在をキャッチするのは、以前と比べれば格段に容易になった。お出かけ前などにチェックしてみてはいかがだろうか。
■信号場にはどんな種類がある?
信号場は大きく分けてつぎの5タイプを挙げることができる。
・A:単線区間の行違いのため
・B:複線区間の追越しなどのため
・C:分岐点
・D:単線と複線(複線と複々線なども)区間の境界
・E:その他
一部に複数の役割を兼ねるケースも見られるなか、もっともポピュラーなのが「A:単線区間の行違い」で、全体の6割を占める。単線区間では駅で列車の行違いをさせるのが一般的だが、駅間距離が長い区間などで途中に信号場を設けて運行の効率化をはかる場合がある。沿線人口の少なさや地形などの事情から駅を設けづらい路線や地域に多く、たとえばJR北海道では現存39カ所中33カ所がこのタイプ。また、駅廃止後にこの目的で信号場として残されるケースも多い(後述)。