「それで、カラーを一度やってみよう。ついでに使ったことがなかったデジタルカメラにしてみよう──と思ったんですよね」
試してみたら、小さいデジタルカメラはたいそう気に入った。撮った写真がすぐに確認できるのもいい。
「それからは色探し。カラーはとにかく『色』が大事だから、自分が好きな色を探して歩くようになりました」
カラー写真と一緒に載っている文章も、かろやかで無駄のない詩のような印象だ。
たとえば本書のこんな文章。<今、私はあの世から、この世に戻って来たところだ>。カラー撮影を始めた武田さんの驚きが伝わってくる。
「私の場合、何かを説明したいというよりも、街を歩いていて面白いものが『いい色』になっているのを見つけた時、『見てみて、こんなものがあったよ』と、教えたくなる。私にとってその方法が、写真を撮ることなんでしょうね」
(ライター・矢内裕子)
■ブックファースト新宿店、渋谷孝さんのオススメの一冊
漫画家の松苗あけみさんによるエッセー『松苗あけみの少女まんが道』は、往年のマンガファン必読のエピソード満載の一冊。ブックファースト新宿店の渋谷孝さんは、同著の魅力を次のように寄せる。
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往年のマンガファンにはたまらないエピソードがてんこ盛りの回顧録的エッセーです。マンガを読むのも描くのも好きな松苗あけみさん。マンガへの風当たりが強かった時代でも、理解あるご両親の元でイラストやマンガを描き続け、高校では漫研で活動。高校卒業後は同人誌を作る傍ら、作家さんの仕事場を訪ね、執筆中の姿や、直接原稿を見せてもらいそのクオリティーの高さに驚いておりました。
そんな松苗さんが一条ゆかり先生のアシスタントをすることになり、新規に創刊される雑誌でのデビュー、休刊後に他誌に移籍し、大活躍する様子が描かれております。サンリオが出した雑誌「リリカ」、伝説の少女誌「ぶ~け」、今でも語り継がれる作家「内田善美先生」、同じ雑誌で活躍された「吉野朔実先生」などのキーワードにピンときた方は必読です。
※AERA 2020年7月27日号