AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。「書店員さんオススメの一冊」では、売り場を預かる各書店の担当者がイチオシの作品を挙げています。
モノクロ写真を撮り続けてきた著者は、ある日、突然、カラー写真に開眼する。目に飛び込んでくる色の氾濫は、まさに「大作戦」というべき変化だった。武田花さんによるポップなフォト&エッセー集『ポップス大作戦』を紹介する。
* * *
懐かしい路地裏にいる猫たちや街の風景。思いもかけぬ空間にある不思議なオブジェ──武田花さん(68)の撮るモノクロ写真と文章は、一度読んだらやみつきになる。武田さんが見つけた不思議な空間、くつろぐ猫たちに何度でもあいたくなるからだ。
そんな武田さんがモノクロではなく、初めてのカラーフォト&エッセー集『ポップス大作戦』を出した。看板やバラ、色とりどりのビーズにバンビの置物などが詰まった、書名どおりのポップな「大作戦」だ。
「若い頃は『色』が邪魔な気がしていたんですよね。そもそも私が写真を撮るようになったのは、18歳のある日、父がカメラを買ってくれたから。それで拾ってきた猫を撮るようになったんですが、最初からなんとなく『写真はモノクロがいいな』って。たまにカラー撮影の依頼があると、しぶしぶ撮ってはいましたが、面白いと思えなかった」
ところが6年前のクリスマスも近いある日、いつものようにカメラを持って出かけたら、「飽きちゃった」という気持ちがわきあがってきた。
「『またおんなじ?』って、急に思ったわけ。『やだ私、飽きちゃったわ』って。『またいつものように歩いて写真を撮るのか』と思ったら嫌になってしまって、家に帰って布団をかぶって寝ちゃったの」
翌日から「もう仕事をしないのだろうか?」と自問しながら、家でブラブラすること数日。以前、知人に「カラーをやればいいのに」と言われたことを、不意に思い出した。