平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長
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2005年モントリオール世界水泳の中村真衣のスタート (c)朝日新聞社
2005年モントリオール世界水泳の中村真衣のスタート (c)朝日新聞社

 指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第29回は「スタート技術の磨き方」について。

【写真】2005年モントリオール世界水泳の中村真衣のスタート

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 競泳のレースは「泳いでいない」ときがあります。スタート、ターン、タッチです。勝負に勝つためにこれらの技術を磨くことは泳ぎと同じくらい重要です。

 スポーツ庁の鈴木大地長官が1988年ソウル五輪の男子100メートル背泳ぎで金メダルを取ったとき、決勝でバサロスタートの潜水距離を伸ばした点が注目されましたが、激しい競り合いで勝利を引き寄せたのはタッチの技術でした。「指先に目がある」と言われるほど、ぴたりと決めました。

 前回も書いた、私が指導した寺川綾が、2012年ロンドン五輪女子100メートル背泳ぎで前年の世界選手権銀のズエワ(ロシア)に0秒17差で銅メダルを獲得できたのも、スタート、ターン、タッチの技術で上回っていたのが大きかった。

 北島康介のライバルだったモーゼス(米)はターンが抜群にうまく、北島は短水路(25メートルプール)のレースでは泳ぎで追いついても、ターンのたびに離されていました。何が違うのか。映像を見ながら研究をして、ターン後の水中のひとかき一蹴りの動きの改善に生かしていきました。

 子どものころから長く水泳を続けている選手たちは「自分の型」を持っています。それを変えるのは簡単ではありません。変えようと意識しなければ、いつもの型に戻ってしまいます。

 スタートの動作を変えていくときは、一人ひとり筋力や柔軟性が異なるので自分に合ったやり方を見つけていく必要があります。

 お手本となるスタートをイメージさせるために、世界のトップ選手たちの映像を見せます。外見的な特徴だけでなく、股関節の向きやひざを伸ばすタイミングなど、なぜ力強いスタートができるのか、動きのメカニズムを説明します。

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