〈野田総理訪中をめぐって起きた官邸内の内部紛争〉
と題するA4サイズ4枚の文書が1月中旬、与野党内や霞が関で出回り、官邸が大騒ぎになっている。
野田佳彦首相は昨年12月25日から2日間の日程で訪中し、胡錦濤国家主席、温家宝首相らと会談したが、実は25日午後、北京の「ある場所」を訪れていた。
筒井信隆・農林水産副大臣らの案内で、中国政府の全国農業展覧館内で工事中の「日本産農林水産品・食品常設展示館」を視察したのだが、これが"火種"となっているのだ。
同館は、中国で日本産の農林水産品・食品を普及させるため、宣伝、展示、試食、販売を行う常設展示館だが、文書には経緯が以下のように記されていた。
〈筒井農水副大臣は自らの権限で2010年12月、中国農業発展集団総公司の子会社と協定書を締結し、同会場の9千平方メートルを今後少なくとも5年間、賃貸すると約束。賃貸料、内装変更工事費など約4億円を中国側へ支払うとし、筒井副大臣は中国側と取引をする窓口となる農水省所管の一般社団法人「農水産物等中国輸出促進協議会」(以下は促進協議会)を設置させ、国会議員秘書のA氏(原文は実名)を代表にし、農水省顧問にも就任させた〉(文書から抜粋)
中国への食品輸出の独占窓口となる促進協議会(千代田区)は当初、昨年9月20日の展示館開設を目指すとし、輸出を希望する企業から入会金・年会費(25万~125万円)を大々的に募った。しかも、「促進協議会が登記している事務所」は、促進協議会の法人会員が所有するビルにタダで入居する公私混同ぶりだという。
ところが、東日本大震災の影響で会員は集まらず、正式契約は十数社にとどまり、展示館の開館は延期。中国側への賃料など支払いが難しくなった。
困った促進協議会は基金と称し、医薬品、食品企業数社から約1億5千万円をかき集めたという。
「その金から賃貸料1億3900万円を昨年9月に中国へ送金した」(A氏)
文書はこうも指摘する。
〈まったく使っていない展示会場の賃貸料を業者をごまかして集めた巨額の資金で支払(略)、中国側に約束した残額1億円を支払う目処は立っていない〉
基金を拠出した企業担当者がこう困惑する。
「基金を出せば、検疫免除など特別通関が実施され、通常では困難な商品でも輸出販売でき、基金も戻ってくるという触れ込みでした。2月20日には展示館が開設すると聞きましたけど......」
こうした事態に筒井副大臣とA氏が官邸に泣きつき、野田首相の視察が昨年末、実現したが、年明け早々に今度は文書が流出した。
〈鹿野大臣、筒井副大臣の画策に対し、農水省や経産省、外務省が反発した〉(文書から)と暴露合戦が仕掛けられたのだという。
事業はどうなるのか。
筒井副大臣が言う。
「中国側に確認したら、現状では検疫免除は難しく、開設のめども立っていない。農水省の事業支援も一時期は中止せざるを得ない」
ヘタをすれば政権が吹っ飛ぶ"爆弾"になりかねない。