「数学や統計、情報系の学生は主に加工されたデータを扱う専門教育を受けています。そういう知識のある学生が生のデータの扱い方を知り、生のデータを扱うことが多い工学系や薬学系、経営学系の学生がデータの専門知識を得る。これはどちらも大切です。知識の幅が広がることで、社会で起きている課題の解決に貢献できます」

 19年度は58人が単位を取得し認証書を受けた。卒業単位以外の科目も履修することになるが、それでも学びたいという学生が少なくない。20年度は大学院生向けに、より専門分野に特化した「データサイエンス教育プログラム[専門]」も設置。「数理」「ビジネス」「人工知能」「医薬」「機械学習」「医療統計」「インフォマティクス」の7コースから選び8単位を取得する。

 若山副学長は、データやAIに振り回されないことも大切だと強調する。

「生データを適切に処理していなかったり、ネットを通じて取得した元データからデータが生成されて、その結果歪んだデータになったりしていることはよくあります。AIも原理が分からないまま使って、データを入れればとにかく結果が出てくるというのが危ない。AIは便利な道具ですが、場合によっては危険な道具にもなるのです。理科大にはAIやデータの扱い方、どう使えるかまでを考えられる人材を世の中に送り出す責任があります」

 矢部センター長も「セキュリティーや倫理、つまりデータを扱う際にしていいことといけないことも織り込んで学ばせるのが課題です」と語る。

 今のところ履修希望者だけを受け入れているが、もう少し踏み込んでより多くの学生に学ばせたいと若山副学長は考えている。

 「アメリカの大学のようにダブルメジャーやメジャーマイナーの制度を導入するのも一つの方法でしょう。ただアメリカではその結果、メジャーとして数学・コンピュータサイエンスを取る学部学生が増えて教員が不足し、大学側が困っているといいます」

 若山副学長が指摘するようなAI教育をする側の人材不足は、日本でも課題になると予想される。

(文/福永一彦)

※AERAムック「大学院・通信制大学2021」から