ネタ番組は毎週新作を作らなくちゃいけなくて、これがすごく大変。特に団長はネタを作っていたから、つねに新しいのを考えろって言われていて、だんだんエンストをおこしてきちゃって…。
ネタの練習だって、深夜になることなんて当たり前。次の日、朝から仕事があっても関係なく、とにかく練習練習。それでも、ネタがボツになることもあるし、失敗も増えてきて、うまくいかなくなって、結果を残せない日も多くなった。
後輩芸人もドンドン新しい存在も出てきたし、順調にあった仕事はあっという間になくなったんだ。
団長もHIRO君もアルバイトばかりの生活になって、このまま仕事がないんだったら、お金も続かないし、やめるかもしれないっていう雰囲気もただよってきたの。団長は実家の仕事を継ぐことを考えていたみたいだし、HIRO君は親からもういいんじゃないかって、散々言われていたみたいだった。
ボクは元々アイドルになりたかったわけだし、「これでやっとやめられる」っていう気持ちも少しあった。
でも、もうその頃には、人前でバカバカしいことをやって笑いを取ることにボクは喜びを感じるようになっていたんだ。団長とHIRO君とはつねに一緒にいて、劇場にも毎日出て、家族のように過ごしていたし、せっかくここまで3人で頑張ってきたのに、このまま安田大サーカスをなくすのは嫌だなって、ボクは思うようになってた。
でも、あいかわらず仕事は増えなかった…。
●初めて訪れた「解散危機」から復活できた団長のある戦略
そんな時、ABCお笑い新人グランプリの開催があったの。
ABCお笑い新人グランプリは、過去に、ダウンタウンさんやナインティナインさん、中川家さん、ますだおかださんなども出場していた若手芸人の登竜門的なコンテスト。
「このコンテストで何も賞をとれなかったら、安田大サーカスの今後はない」
ボクらは、そう腹をくくって、このコンテストにのぞむことにした。
ボクは「安田大サーカスを続けたい」、その一心で頑張ることに決めた。
正直、3人でいて良かったって思い出は少なかったけど、もう会えなくなるっていうのは絶対嫌だったから。