「全力で天皇の公務を全うできなくなったから、という『退位宣言』の理由からわかるとおり、戦前、戦中、戦後から高度経済成長の時代を知る上皇さまと上皇后さまは、仕事や立場を全うすることに対して、生真面目で、責任感が強い」

 一方で、令和の天皇陛下は、2004年の「人格否定発言」に象徴されるように、「私」が「公」に潰されないような、皇族の生き方を訴えた。

 東宮時代のおふたりは公務でお出かけのときに、そばにいた人物によれば、仲がよく、雅子さまは、当時の皇太子さまに、「だよね」とリラックスした雰囲気で話しかける場面もあった。上皇さまの別の同級生もこう話す。

「家族と天皇の地位とを秤にかけるより、できることならば両方守ってゆく。よい悪いという議論は、不毛です。それが令和の皇室の在り方なのでしょう」

 皇室で変化したのは、公務の在り方だけではない。生活スタイルの変化からも、皇室を取り巻く状況がうかがえる。

 宮邸に飾られる写真立てといえば、銀食器・銀製器の老舗の銀製の写真立てが定番だった。日本が誇る職人の手による工芸品を、皇族も愛用してきた。

「しかし、数十万円する高価な銀の写真立てで写真を飾っていたのは、昔の話。そこまでお金をかけるのは難しいと思います」(宮家の関係者)

 ほかにも食器は、大倉陶園。フォークやナイフなどカトラリーも、皇族のお印を入れた日本の銀製品が定番であった。

 一方で、雅子さまの嫁入り道具に、ドイツの老舗メーカーであるビレロイ&ボッホの食器セットがあったのは有名な話。いまは30代の若い皇族方はもちろん、秋篠宮家でも海外製の洋食器やカトラリーを使用しているという。老舗の食器ブランドだけでなく、グッチやティファニーなどの食器が食卓に彩りを添えているようだ。

 ファッションもだいぶ変わった。和装も多い美智子さまであったが、洋装でも日本の伝統的な和の技術を融合させるスタイルで、日本の職人や企業を応援した。体現したのは、植田いつ子さんや、滝沢直己さんら一流デザイナーだ。

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