実は、これらの支援活動には、天皇陛下からの寄付金の一部があてられる予定だ。学習支援を行う渡辺さんが、両陛下の支援について、子どもたちに話してもよいものかとたずねると、両陛下は、力強くうなずいた。

「子どもたちに、応援していますと。ええ、ぜひ伝えてください」

 皇室と子どもを支援する団体の交流は、昭和や平成でも多くある。しかし、小河さんや栗林さんらの活動はまだ、新しい。子ども食堂の存在も5、6年ほど前にやっと世間に知られるようになったところだ。

 令和の天皇陛下は、皇太子時代から、「時代に即した公務の在り方」という言葉を使っていた。令和の新しい公務は、その輪郭を現し始めたようにも見える。

 令和色が顕著なのが、「ご進講」の在り方だ。

 両陛下は、新型コロナ関係で外務省や厚生労働省を含め幅広い専門家のご進講を受けている。7月には、経団連、日本商工会議所、経済同友会の代表という珍しいメンバーが御所を訪ねた。

「経済への影響について話を聞きたいとの両陛下の希望だった」(宮内庁関係者)という。

 変わったのは、ご進講のスタイルだ。

 平成では天皇と皇后で別だったご進講を、令和では一緒に受けている。

「上皇后陛下は『天皇へのご進講は国の重要な仕事なので、皇后は同席すべきではない』というお考えだったのではないでしょうか。一方、一緒に受けておられる令和の両陛下には、新しい感覚を感じます」(宮内庁OBの山下晋司氏)

 さらに、明治時代から皇后が受け継いできた養蚕でも、珍しい場面があった。6月に、成長した蚕を「蔟(まぶし)」と呼ばれる網に移す「上蔟(じょうぞく)」の作業を皇后雅子さまが天皇陛下と一緒にしたと報じられたのだ。上皇さま美智子さまと一緒に繭を収穫することはあった。しかし、「天皇が上蔟を手伝うのは珍しいと思います」(同前)。

 令和の天皇、皇后と、平成の天皇、皇后の在り方は、だいぶ違う。上皇さまの同級生である織田正雄さん(86)は、こう話す。

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