実際、章男氏と佐藤氏には、いくつかの共通点がある。一つは、努力を惜しまないことだ。
「トヨタの思想、技、所作を身につけようと、クルマづくりの現場で必死に努力をしてきた人だから」
章男氏は、佐藤氏を社長に選んだ理由をそのように述べたが、章男氏自身、40代後半にして、故・成瀬弘氏に手ほどきをうけ、ドライビングテクニックを身につけるなど、努力を惜しまない人である。
2人のクルマ愛の強さについては、説明するまでもないだろう。1月の「東京オートサロン」の席で、章男氏は、佐藤氏を次のように紹介した。
「『AE86』(1983年発売のトヨタ車)を買ったということばかりをネットでアピールしている人がいます」
章男氏が「なぜ、『AE86』を持ってきていないの」と問いかけると、佐藤氏は「愛が強すぎて、いろいろ直し過ぎて、まだバラバラで持ってこられませんでした」と応じた。
若い世代が答え出す
モータースポーツ好きも共通する。章男氏同様、佐藤氏もレース場に足しげく通う。水素エンジン搭載の「カローラ」で耐久レースに参戦し、記者会見では章男氏と息の合ったところを見せる。
2人の相違点といえば、66歳の章男氏に対し、佐藤氏は53歳という若さがあることだ。「トップには、体力、気力、情熱が欠かせない」と、章男氏は会見で述べている。(ジャーナリスト・片山修)
※AERA 2023年2月13日号より抜粋