推定患者数が2万人を超える膀胱がん。膀胱内にがんが多発し、再発しやすいことが特徴で、進行すると膀胱全摘除術が必要となる。2018年にはダヴィンチによるロボット支援手術が保険適用となった。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、膀胱全摘術について専門医に取材した。
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膀胱はおへその下あたりにある臓器で、尿をためる・排泄する働きをもつ。内側は「尿路上皮」という粘膜でおおわれている(イラスト参照)。膀胱にできる膀胱がんは、尿路上皮ががん化したものが90%以上を占める。男女比は3対1で男性に多く、最大のリスク要因は喫煙だ。そのほか、家族歴、膀胱がんの発がん物質にふれやすい職歴などが関係すると考えられている。
しかし、藤田医科大学病院の腎泌尿器外科主任教授の白木良一医師は、男性に多い病気と思い込むことは危険だと話す。
「最近、喫煙歴や家族歴がない70代、80代の高齢の女性に発症するケースが増えているからです」
多くは血尿で発症に気づく。そのほか、排尿時痛、頻尿などがあらわれることもある。膀胱内に多発しやすいことも特徴だ。
膀胱がんが疑われたら、尿細胞診検査、膀胱鏡検査、腹部超音波検査などがおこなわれ、診断の確定には、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)を用いる。
尿細胞診検査では、尿中にがん細胞があるかどうかを調べる。
膀胱鏡検査は直接膀胱の中を見ることができるので、診断には有用だ。通常は、外来で、ゼリー状の麻酔薬で尿道に麻酔をかけ、軟性鏡を挿入しておこなわれる。
「痛みはほとんどありませんが、なかには恐怖心をもつ患者さんもいます。また、検査後に血尿や発熱がみられることもあって、患者さんにはある程度、負担になります。超音波検査で腫瘍のようなものがあれば95%以上膀胱がんと考えられること、そのあとのTUR-BTでがんかどうかを確定できることなどから、最近は膀胱鏡検査を省略するケースも増えています」(白木医師)