■TUR-BTは診断・治療にもなる
TUR-BTは尿道から内視鏡を挿入、膀胱内を見ながら、がんを電気メスで切除。組織を採取して、がんの性質や進行度をみる。
低リスクの膀胱がんであれば、TUR-BTでがん細胞を切除し、取り切れればその後の治療が不要になることもある。したがって、がんを残さないことが重要になる。肉眼では見つけにくいがんを見極めるために、蛍光物質を用いた検査もおこなわれる。従来の狭帯域光観察(NBI)という方法に加えて、2017年にはより精度の高い光力学的診断(PDD)が保険適用になり、徐々に普及してきている。
膀胱がんはがんの性質や進行度によって、TaからT4に分類される(イラスト参照)。ポイントは粘膜の下にある筋層にがんが進行(浸潤)しているかどうかだ。浸潤のないものがTa、粘膜下に浸潤はあるが筋層にまで達していないものがT1、筋層に浸潤のあるものがT2以上とされる。筋層に浸潤があると、筋肉内の豊富な血液によって、容易に転移してしまう。また、粘膜内に広がるように進展する上皮内がん(Tis)は、将来的に筋層浸潤がんへ移行しやすく、一般的な上皮がんに比べて悪性度が高いため、注意が必要だ。
Ta、T1についてはTUR-BTによるがん切除が治療の第一選択になる。TUR-BTののちに抗がん剤を膀胱内に注入し、再発リスクを下げる。T1で悪性度の高いもの、Tisについては、TUR-BT後、ウシ型弱毒結核菌(BCG)を膀胱に注入してがんの再発を予防する(後述)。
T2以降のがんでは、リンパ節や周辺臓器(尿道、前立腺、子宮など)へ転移する可能性を考慮して、膀胱全摘除術が検討される。転移が多ければ、薬物療法がおこなわれる。
■ロボット手術が18年保険適用
膀胱全摘除術は、男性なら膀胱のほかに前立腺、尿道、リンパ節を、女性なら子宮、卵巣、リンパ節を切除するのが基本だ。
膀胱を全摘すると、新しく尿路をつくる尿路変向術が必要になる。もっとも多くおこなわれているのは、回腸(小腸の一部)を尿管につなげる「回腸導管造設術」だ。排尿は皮膚につくった排泄口(ストーマ)を介し、ストーマには尿をためる袋をつける。