膀胱がんは、尿をためる・排泄するはたらきを持つ膀胱にできるがんだ。性質や進行度によってTaからT4に分類され、粘膜の下にある筋層にがんが進行(浸潤)していないものがTa、粘膜下に浸潤はあるが筋層にまで達していないものがT1、筋層に浸潤のあるものがT2以上とされる。
Ta、T1は、尿道から内視鏡を挿入してがんを電気メスで切除する経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)が治療の第一選択になる。一方、T2以降では膀胱全摘除術が検討されることが多いが、その場合は新しく尿路をつくる尿路変向術が必要になる。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、尿路変向術や再発時の治療について、専門医に取材した。
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尿は腎臓でつくられ、腎臓→腎盂→尿管→膀胱→尿道→尿の出口という道筋で排泄される。膀胱全摘除術で膀胱を摘出すると膀胱と尿道がなくなってしまうため、尿路変向術が必要になる。
■尿路変向術には三つの方法がある
尿路変向術には、(1)自分の回腸(小腸の一部)を使って新しい尿路をつくる「回腸導管造設術」、(2)回腸を使って新しい膀胱をつくる「自排尿型新膀胱造設術」、(3)切断した尿管を皮膚に縫い付ける「尿管皮膚瘻造設術」がある。
藤田医科大学病院の腎泌尿器外科主任教授の白木良一医師は次のように話す。
「膀胱全摘除術では、がんの根治性を上げることが治療の第一義です。しかし、治療後の患者さんのQOLを左右する尿路変向術も、非常に重要な治療です」
現在、もっとも多くおこなわれているのが、(1)回腸導管造設術だ。膀胱摘出のあと、回腸を12~13センチほど切り取り尿管に縫い付け、皮膚につくった排泄口(ストーマ)につなげる(イラスト参照)。手術時間は、膀胱摘出からプラス2時間ほどだ。
尿はストーマから常に出るので、尿をためる袋をつける。このことが生活上の制約になってしまうが、慣れるとストーマの管理はそれほど難しくなく、ゴルフなどの運動や旅行を楽しむこともできるという。