――薫さんは今年3月から「The Freedom of Expression」というYouTubeチャンネルを開設して「表現の自由」をテーマにして、時事問題についても意見を発信しています。前身のラジオ番組から数えると5年にわたって番組を続けていますが、個人でこうした活動をしようと思ったのはなぜですか。

薫 決して政治や経済に詳しいわけでもないですけど、バンドマンとして、一人の表現者として、自分の立場に置き換えて、今の社会をこう見ていると意見を言うことはできますよね。それが世間にどう映って、どう伝わって、自分に跳ね返ってくるのか。そこに興味があって始めたところが大きいですね。とはいえ、知らないことはしったかぶっても仕方ない。共演してもらっているラジオDJのジョー横溝さんと東京スポーツの田才記者がいてくれるからバランスが取れているし、成り立っています。お二人がいるから、自分の立ち位置から物事を言えるし、別の意見を聞けて勉強になりますね。

――かつては、ミュージシャンは音楽以外のことをあまり話さない方がいいという風潮もありました。ファンは音楽が好きなのであって、それ以外の言葉は余計だと。一時期は「音楽に政治を持ち込むな」という議論もありました。その点を薫さんはどう感じていますか。

薫 ミュージシャンはこうあるべきだ、みたいに決めつけなくていいんじゃないですかね。ファンの人が単純にアーティストとして見たいという気持ちもわかりますが、そのアーティストだって1人の人間であり、意見は持っているわけでしょう。ファンの人もその意見を聞かない自由もあるし、作品だけを見る自由もあるわけです。ロックってそもそも自由なものなんだから、そんなに凝り固まる必要はないと思うんです。ミュージシャンが自分の発言に責任持ってやれるか、やれないか。それだけだと思います。

 あと、自分たちはしょせんロックバンドです。はっきり言って、世の中は救えないですよ。本当の危機的状況で、すぐ横の人がバタバタ倒れている状況のなかで、音楽はその人たちを直接的には救えない。ミュージシャンは、そういう時には無力です。だからこそ、音楽を聴く余裕がある、音楽を楽しめる世界であってほしいと願っています。

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この状況に「屈したくない」