薫 そこは変わらないですね。うちらの場合は、ステージで世界観を作って、そこにお客さんが入り込んで盛り上がっていくスタイルなので、グチャグチャ系のライブとは少し違う。ホールでも通用する世界観が作れることがバンドの「表現」なのだから、そこを変える必要はない。表現を変えるのではなく、特にライブハウスでやる場合は、会場の作り方を変えていくことになると思います。たとえば、ステージと客席の間に巨大な幕を張るとか、密にならないようにブロックを作るとか、どうやったらライブハウスで公演できるかを模索する必要はあると思います。

――そもそもロックは社会の“常識”や“規範”から外れたところで表現の自由さが生まれ、ファンもロックバンドのそうした姿勢に魅了される部分はあると思います。感染症対策とはいえ、政府から「ライブはするな」と言われる現状に対して、ロックミュージシャンとして歯がゆさを感じることはないですか?

薫 うちらは国に言われたからやめたというよりも、見に来てくれるお客さんを第一に考えて判断しています。周りの人が気になって、感染ばかりを警戒して、ステージに集中できない環境では、うちらもパフォーマンスを発揮できないし、お客さんだって楽しくない。その状況ではやることに意味はない、という判断なんです。

 そもそも、国はこの先もロックバンドのライブを「どんどんやってくれ」なんて言わないでしょう。できるなら「やめておいてくれ」というのが本音だろうから、どこかで自分たちが「これならやれる」と判断した段階で、自発的にライブを再開していくしかないと思います。対策をしながら、すでにライブをやっているバンドもいます。世間からの批判もすごく大きいと思いますが、自分は彼らを応援したい。そういうバンドが少しずつ増えて、一歩でも前進して、実績を積み上げていくしかない。だから、今動いているバンドには本当に頑張ってほしいし、DIR EN GREYも「やれる」となったらすぐに動きたい。ライブがやれない状況は、極端にいえば、バンドが存在していないのと同じです。ステージこそが表現の「場」だと思っているので、それがなくなったら自分たちは音楽をやっている意味がない。だからこそ、中途半端な環境ではなく、納得できる形でライブを再開するために試行錯誤しています。

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ロックは「凝り固まる」必要はない