日本人の3人に1人が睡眠に関わる問題を抱えていると言われている。なかでも、睡眠中の問題として代表的なものが「いびき」だ。いびきは誰にでも起こり得るが、自分自身では気づきにくく、家族や友人に指摘されて自覚することが多いだろう。一緒に寝る人の睡眠を妨げるもの、というイメージが強いかもしれないが、いびきは自分自身の健康に悪影響を及ぼすという。いびきを中心に診療をおこなう歯科医師に取材した。
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寝ている間にグーグーと音を鳴らすいびき。多くの人が一度は指摘されたことのある現象だが、なぜいびきが起きるのかを説明できる人は少ない。
日本大学松戸歯学部付属病院「いびき外来」の外来長である鈴木浩司歯科医師は、いびきのメカニズムを次のように説明する。
「何らかの原因で上気道(喉の奥の鼻と口がつながっている周囲)が塞がれてしまい空気の通り道が狭くなると、いびきが起きます。狭い隙間を空気が通ったときに周りの粘膜が振動して、いびき音が出るのです。代表的ないびきの原因は、舌の沈下です。上を向いて寝たときに、舌が喉の奥に落ち込んで気道を塞ぎ、いびきが起きます」
舌の沈下による影響は、主に肥満の人に起きやすいという。肥満の人は舌にも脂肪がついて肥大化しているので、口腔内のスペースに舌がおさまらず、喉の奥に沈下してきてしまう。ただ、肥満の場合は首回りについた脂肪が喉を圧迫するなど、沈下以外の要因もあることに留意したい。
また、顎(あご)が小さい人も舌の沈下による影響が起きやすい。顎が小さい人や後ろに引っ込んでいる人は、喉が顎に圧迫されるので、もともと気道が狭い。太っていなくてもいびきをかくという人は、顎の大きさが原因であることが多い。
一般的にいびきは、一緒に寝る人の睡眠を妨げるもの、というイメージが強い。しかし、いびきは自分自身の健康とも大いに関係があると、鈴木歯科医師は言う。
「いびきが起きるとき、空気は喉のわずかな隙間を通っています。では、もう少し舌が沈下したらどうでしょうか。完全に隙間が塞がれて、呼吸が止まってしまいます。この呼吸停止が頻繁に起こるようになると、睡眠時無呼吸症と診断されます」