そうそう。漢字って、特に草書体の場合は書き順を間違えるとなんて書いてあるかわからないこともあるから。決まった順番で書くことは、私たちにとっては重要なんだよね(漢字圏でも、国と地域によって書き順が違うこともあるけれど)。

「私が見た限りでは、中国の生徒たちも決まった書き順を暗記していたよ。ただ、私がアメリカで習ったのとは別の書き順だったこともあったなあ」

 中国だけのガラパゴス筆順が生まれていたのか──。これは日本でも見られる現象かも。

「でもね、アメリカでも書き順が重要になるときがあるよ」

 え、いつ?

「それは、筆記体を書くとき。漢字の草書体と同じで、決まった順に書かないと伝わらないから」

 なるほど、筆記体は書き順が決まっているのか!

「昔は必須科目だった筆記体だけど、今は教えていない学校が多いの。手書きの機会も減っているし、アルファベットの書き順は気にしない!って人がアメリカでは大半になっているのかもね」

 そうだね。アメリカは契約書のやり取りがオンラインで済んじゃったり、グリーティングカードの内容も印刷で済ませる人が多かったりするものね。

「私個人は、筆記体を習う前提で書き順を教えるようにしているの。手書きの文化って、なくしたくないじゃない」

 以上が、実地調査の結果です。筆記体を習うなら書き順を意識したほうがいいかもしれませんが、基本的にはひとつの書き順にこだわる必要はなさそうです。

 もしお子さんがブロック体アルファベットの書き順を覚えられずに苦労していたら、ぜひ教えてあげてください。アルファベットには決まった書き順なんてないんだよ、と。実は日本の文部科学省が作成したワークシートにも、こう明言されています。「アルファベットの書き順は参考に提示したものであり、決まりはありません」と。皆さんはご存じでしたか。

◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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