シーズンの3分の1が過ぎたが、日本ハム・斎藤佑樹の1軍登板機会がない。今年でプロ10年目。ファームでも8月16日のロッテ戦(浦和)に救援登板し、1回2/3を投げてソロ本塁打を浴びて1失点。これで計10試合に登板して1勝3敗、防御率7.15(16日現在)と結果を残していない。打者の手元で球を動かし、バットの芯を外してゴロで打ち取ろうと投球スタイルの意図は見えるが、球威がなく制球が高いために痛打を浴びる。絶対的な決め球もなく、打者を抑えきれないのが現状だ。
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日本ハムの番記者は、こう話す。
「長いイニングは厳しいので、救援で1イニングを抑えることに活路を見いだすしかないと思います。表情は明るいですよ。練習にも前向きに取り組んでいます」
置かれた状況は厳しい。1年目に6勝、2年目に5勝、3年目以降は7年間で計4勝。アマチュア時代は早稲田実高(東京)で3年夏にエースで全国制覇、早稲田大で六大学リーグ史上6人目の通算30勝、300奪三振を達成し、「ハンカチ王子」で社会現象になるほどの輝きぶりだったが、今はその面影はない。
結果を残せないシーズンが続いても、斎藤の注目度が高いのは「黄金世代」のトップだった宿命だろう。高校時代にライバルだった田中将大(大リーグ・ヤンキース)や前田健太(大リーグ・ツインズ)、坂本勇人(巨人)、2010年秋のドラフトで同期入団の柳田悠岐(ソフトバンク)、秋山翔吾(大リーグ・レッズ)が球界を代表するスーパースターとして活躍している。プロ入り後に明暗を分けた形となり、まばゆい光を放っている彼らと伸び悩む斎藤が比較されてしまう。
プロ2年目に「右肩の関節唇損傷」と診断されたのも、野球人生の大きな分岐点になっている。ダイエー、ソフトバンクで「平成の大エース」として活躍した斉藤和巳も、右肩関節唇損傷の手術後に1軍のマウンド復帰を目指したがかなわぬまま現役引退した。このケガで現役引退を余儀なくされた投手は多い。プロ2年目で投手生命を脅かす故障に見舞われた当時のショックは計り知れないだろう。斎藤と現役時代にチームメートだった投手は、こう語る。
「高校時代のフォームに戻してあの球を投げればいいと言われるのが一番苦しいんですよ。体格も当時と変わっているし、ケガをして同じ投げ方はできない。あの頃の球はもう投げられません。斎藤もそれは分かっているでしょう」
プロ入り後に目立った活躍をしていないため、酷な言い方だが「復活を目指す」という表現は当てはまらないだろう。世代の中心としてマウンドで光り輝いていた早稲田実高の3年時から14年の月日が過ぎようとしている。1軍のマウンドでもう一度雄姿を見たいというファンは決して少なくない。斎藤はこのまま消えてしまうのだろうか。(梅宮昌宗)
※週刊朝日オンライン限定記事