■バランスのよい食事 運動を心がける
薬物療法と並行して、食事療法と運動療法をおこなうことは、骨粗鬆症の患者にとってはとても重要になる。
「バランスよく食事をとることが大原則です。そのうえで、骨粗鬆症の治療・予防には、カルシウム、たんぱく質、ビタミンD、Kの摂取が大切です。特に日本人は、ビタミンD不足の人が多いので、薬の効き目を良くするためにもビタミンDを積極的にとりましょう」(同)
運動療法は、骨量の維持と同時に筋力維持のためにも欠かせない。
「日頃から運動習慣のある人は問題ないと思いますが、そうではない方は、ウォーキングだけでもいいでしょう。歩いて骨に負荷をかければ、筋力もつき、転倒の予防にもなります。あまり無理をせずにできる範囲での運動を心掛けてください。医師以外の、医療スタッフからもアドバイスをもらい、実践しましょう」(同)
骨粗鬆症の治療は、「継続」が課題だ。一度、大腿骨近位部骨折を経験した人ですら、骨粗鬆症治療を2年以上継続しているのは3割程度というデータもある。竹内医師はこう話す。
「骨密度は、血糖値や血圧のように日々測定することはありません。数カ月や1年に一度の検査で数値を知るケースがほとんどですので、患者さんがモチベーションを維持して治療を続けるのが難しい。とはいえ、介護の重度化や寝たきりにつながるリスクを考えると対策は急務です」
現在、全国で病診連携、病病連携などにより、患者の経過を把握する試みは広まりつつある。だが、地域ごとの温度差はある。
「骨粗鬆症の患者さんには、“骨という部品は壊れていても、他の臓器の働きが衰えていないのであれば、骨を修理しましょう。そうすれば、まだまだ元気でいられるはずだから治療を受けないともったいない”と話します」(竹内医師)
(文・伊波達也)
≪取材協力≫
虎の門病院 内分泌センター長 竹内靖博医師
もちづき女性クリニック 理事長 望月善子医師
※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より