室井佑月・作家
室井佑月・作家
イラスト/小田原ドラゴン
イラスト/小田原ドラゴン

 コロナ禍で人々の不安が増すなか、そのための対応の議論をしない安倍晋三首相に、作家の室井佑月氏は怒りを表す。

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 8月13日の時事通信に、「安倍首相の夏休み、中ぶらりん コロナ禍で定まらず」という記事が載った。

 記事によれば、「地元の山口県入りを検討していたが、新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、東京都の小池百合子知事が旅行や帰省の自粛を都民に呼び掛けたことで立ち消えになった。こうした状況で東京を離れれば批判を招きかねないとの懸念もあるようだ」とのこと。「首相周辺は『毎回、小池氏に邪魔されている』と悔しがる。『批判の集中砲火で疲れている』」といっているらしい。

 休みたいなら休めばいい。多くの国民が、臨時国会を開いてコロナへの対応について議論してくれ、と思っているのに、無視しつづける面の皮の厚さで。憲法違反もなんのそのの間違った根性で。

 てか、7月28日の共同通信には「安倍首相、半分夏休みモードに別荘静養はコロナ次第」って書かれてたもんな。

 首相動静をチェックしている人ならわかると思うけど、ここんとこ安倍さんの官邸での滞在時間は、2、3時間だったりする。そんな時間でなにができるの? つまり、やってる感を我々に示したいだけだろ。

 やってる感を見せているうちに、コロナは自然と収束するだろう、て戦法か? それって、コロナへの戦法じゃない。あたしたちへの戦法だろ。あの人、誰と戦ってんだかさぁ。

 トップのあの人がそんなだから、新型コロナに対しこれでいいのだというこの国の基本姿勢や方針がいつまでたっても見えてこない。いつ収束するかもわからないコロナ禍の中、あたしたちの不安感は増す一方だ。

 他県ナンバーの車を傷つける「自粛警察」などという不埒(ふらち)なことが起こるのも、いってみれば、あの方のせいである。あの方のせいで、コロナだけではなく、国中に嫌な空気が広がっている。

 でもってそんな中、8月14日のFNNプライムオンラインで、「9月立ち上げへ ウィズコロナ五輪会議 イベント規模など議論」というニュースが流れた。「政府が、2021年の東京オリンピック・パラリンピックを『ウィズコロナ』の状態で実現するための新たな会議を9月に立ち上げることがわかった」らしい。

 は~、たまげた。政府で時間とって話し合うのはこっちかよ! あたしたちはこれからの生活が気になってオリンピックどころじゃないってーの。

 夏休みを楽しみにしてて、好きなことに没頭してって、この国の総理はお子ちゃまみたいだ。と、思っていたら、麻生さんや甘利さん、お友達に背中を押されて17日の病院での検診の後、休みを取った。はあ、情けない。総理大臣なのに。

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

週刊朝日  2020年9月4日号

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室井佑月

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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