古市憲寿さん (撮影/写真部・高野楓菜)
古市憲寿さん (撮影/写真部・高野楓菜)
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古市憲寿さん(左)と林真理子さん (撮影/写真部・高野楓菜)
古市憲寿さん(左)と林真理子さん (撮影/写真部・高野楓菜)

 今夏、4作目となる小説を上梓した古市憲寿さん。コロナが広がった3~4月に書き上げ、ツイッターで連載した注目作です。作家・林真理子さんとは“真理子さん”“古市君”と呼び合うお友達。この日は小説家同士としてトークにも花が咲き──。

【林真理子さんとのツーショットはこちら】

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林:しかし古市君って何だか、次に起こる出来事を示唆してますよね。この前の小説『奈落』は、この間のALS患者嘱託殺人事件みたいに、意識があって体を動かせない地獄のようなつらさを書いてるし、今度の小説も、三浦春馬さんみたいな美しい青年が出てくるじゃないですか。

古市:ただ、いわゆる文壇の方には嫌われている気もします(笑)。

林:嫌われてるわけじゃないと思うけど。

古市:こんなふうに「ウェルカム」って言ってくれるのは真理子さんと、本当に何人かの作家さんしかいない気がします。

林:私が直木賞の選考委員をずっとやってきて思うのは、作家ってそういうことを考えてない人たちで、自分のライバルを選び出すために本を一生懸命読んで、一生懸命論戦する人たちだなと思う。それは直木賞だからかもしれないけど。

古市:真理子さんが現役の売れっ子だからじゃないですか。そうじゃない人からすると「本業じゃない人が来た」みたいな感じがあってイヤなのかなと思う。

林:私のときは特にそうでしたよ。直木賞の選考委員の偉い人たちから「テレビに出まくってるこんな女はダメ」とか言われたみたい。

古市:何回目の候補でとったんですか。

林:4回目かな。

古市:当時の選評を読んだことがあるんですけど、回を追うごとに選考委員たちが真理子さんのことを認めていくんですよね。はじめは「絶対ダメ」みたいな感じだったのが、次第に「今回はここがいい」みたいに、評価が上がっていく。実力で選考委員をねじ伏せていく過程が、すごくカッコいいんです。

林:そんな昔からの選評を読んでくれるなんて嬉しいです。芥川賞のことはわかんないけど、直木賞の選考は非常に公平で、自分が脅かされそうだから落としてやろうなんていう人は誰もいません。芥川賞もそうだと思うよ。

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