──立憲と国民の綱領を折衷したのではないのですね。
全く違います。今の時代に即した、新しい綱領を作ったのです。たとえば、「機能する政府」という新しい概念を盛り込みました。これは「大きい政府・小さい政府」に代わる考え方です。大小という議論は極めて古い。「小さい政府」を標榜する自民党は、経済の生産性と効率性を重視すると言いながら、安倍政権の予算は約100兆円。この間の補正予算の規模や使い方を考えても、実態はとても小さい政府とは言えません。
このコロナ禍で国民が政府に求めたものは、自分たちの命と暮らしを守るために「機能する」政府であり、政治でした。アベノマスクはいらなかったし、高熱が続いてもPCR検査を拒否されるような政策は必要なかった。公文書の管理や情報公開に関しても、口では「徹底する」と言いながら、結局、確実に機能する実行力がないのです。
「機能する政府」という考え方は、このような安倍政権へのアンチテーゼであるとともに、かつて政権を担った我々自身への反省にも基づいています。
──総選挙ではポスト安倍と政権を争うことになります。新党は支持されるでしょうか。
小選挙区制では、野党が与党と1対1で対峙できる構造を作ることが重要です。そうすることで、有権者も「どちらが政権を担うにふさわしいか」を選択しやすくなります。次の選挙は、2012年に政権が代わって以来初めて有権者に明確な選択肢を提示できる好機です。
やはり解散前に100議席程度がなければ、政権与党に挑戦することはできません。09年に我々が政権交代を実現した時も、逆に自民党が政権を奪取した12年も、選挙前の衆議院の議席数は110議席強でした。
──最新の世論調査で「新党に期待する」という声は20%前後です。どう見ますか?
多くの政党がある中で、発射台としては十分な数字ではないでしょうか。期待や支持がもっと広がる素地があるということでしょう。急に上がった支持は急に下がりますから、着実に、地道に信頼を得る努力を重ねることだと思います。
私たちも09年当時とは違います。与党として東日本大震災も経験し、仮に次の総選挙で政権を取ったとしても「すぐにできること、できないこと」の区別はよくわかっています。当面は参議院で自公が過半数を持っているわけですから、思い通りに法律を通すことはできません。
だからこそ「政権交代したらあれもやります、これもやります」みたいな公約を掲げて選挙をする気は毛頭ありません。大事なのは「政治のリアリティー」です。その中で安倍政権が何をしてきたのかを有権者に伝え、自公政権にとって代わる政策を提示し、それを着実に実行していくつもりです。安倍政権によって日本が抱えた「ひずみ」は、政権が代わったからといって一気に元に戻せるようなものではないと思っています。
(聞き手/編集部・中原一歩、上栗崇)
※AERA 2020年9月7日号