イスラエルは8月、UAE(アラブ首長国連邦)との国交正常化を発表しました。イスラエルでは誰も予想しておらず、相当な驚きをもってこのニュースは迎えられました。最近、イスラエル政府はコロナ対策に関心を奪われており、パレスチナを含むアラブ諸国との関係は膠着状態でした。
国交正常化はトランプ米大統領による仲介で実現しました。米国とイスラエルの政治評論家は、コロナ対策にてこずっているトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相には、その批判をそらすために何らかの政治的な成果が必要だったと指摘しています。トランプ大統領は11月に大統領選を迎えるために「得点稼ぎ」が必要です。一方で、コロナ対策での失態に対して頻発する市街地デモに直面しているネタニヤフ首相も同じです。
21カ国・1機構のアラブ諸国で、UAEはイスラエルと和平調印する4番目の国・機構となりました。1979年のエジプト、1993年のパレスチナ(注:和平プロセス)、1994年のヨルダンに続きます。
イスラエルとシリアの間には確かに国境をめぐる紛争がありますが、他のアラブ諸国はアラブ人としてのパレスチナ連帯でイスラエルに対立を表明しています。またマレーシア、インドネシア、パキスタンといったイスラム諸国も同様にイスラムとしてのパレスチナ連帯で、イスラエルと外交関係を樹立していません。
国交正常化の声明が出されるやいなや、翌日にはイスラエルの報道関係者はUAEに飛び(3時間半)、イスラエルの旅行者が休日に利用できる豪華ホテルやビジネスの可能性について報道していました。UAEの市民はイスラエルのテレビ取材にヘブライ語で「とても楽しみにしている」と答えていました。
UAEは中東世界でもっともリッチな国のひとつです。国民一人当たりのGDPは4万3千米ドル。イスラエルは4万1700米ドル、日本は3万9千米ドル、エジプトは2500米ドルです。UAEのリーダーであるビン・ザーイドは伝えられるところによると、前任者よりも野心家で、ビジネススタイルは米国に近く、UAEの国際的な地位をもっと上げたいと考えています。