成蹊大学名誉教授の加藤節(たかし)氏は、同大法学部の教員として2013年に退職するまで40年以上教壇に立ち続けてきた。数多くの学生を指導してきたが、その中に若き日の安倍晋三首相もいた。法学部政治学科の学生だった安倍首相は在学時に加藤氏の「政治学史」を必修科目として履修しているというが、加藤氏は「『優』や『不可』をつけた記憶がないから目立たない学生だったのだろう」と振り返る。そんな加藤氏からみて、「教え子」でもある安倍首相の電撃辞任と7年8カ月の政権運営はどう映ったのか。
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――まず安倍首相の突然の辞任について、どう思われましたか。
加藤氏 難病を抱えていたのだから、本当はもっと早く辞めるべきだったのかもしれません。持病である潰瘍性大腸炎は完治しない病気だと言われます。自分ならやれるという思いもあったのでしょうが、そこは自己認識が甘かったのではないか。本来の自民党総裁の任期だった2期6年(2018年9月まで)が限界だったと思います。この時点で森友、加計問題も含めて長期政権の“ゆるみ”が表面化していたのに、自民党が党則を変更して、総裁任期を連続3期9年までとしたことは悪手でした。選挙に強いという理由で、安倍さんをずっと持ちあげて、辞めさせなかった周りにも責任があると思います。それによって、引き際を誤ることになった。そういう意味では、個人的には同情します。ご本人も不本意だったでしょう。ただ、安倍さんが病気で辞めたことと、政権が行ってきた政策の総括とは別です。安倍政権の検証がなされたうえで、次の政権はスタートするべきであり、首相が病気だからという理由で議論をストップさせてはいけません。
――では、政治哲学が専門である加藤先生からみて、安倍政権の7年8カ月をどのように総括されますか。
加藤氏 率直に言って、僕は安倍政権には「負の遺産」しか見つかりません。なかでも3つの点で、非常に問題がある政権でした。