田原:国民は自民党に反対する野党に飽きてる。アベノミクス批判なんて聞きたくない。安倍さんの経済政策をいいと思っている人なんていないんだから。具体的な案。政権を取ったら何をするのか。
小沢:民主党時代の07年には「国民の生活が第一。」という標語を掲げました。何としても政権を取り、そういう政治に転換しないと、日本社会そのものが崩壊してしまうと思っています。安倍さんの下で健全財政論というのは事実上崩れました。大量に国債を発行して日銀が買い入れて、その金をどう使ったか。株を買ったり、為替操作をしたりといったところに使って、国民には一切お金が下りてきていないということが一番の問題。
田原:安倍さんはデフレ脱却を目指し、日銀の黒田(東彦)総裁と組んで、異次元の金融緩和を行った。がんがんお金を刷れば内需は拡大して景気がよくなると。でも実際には内需は拡大せず、借金が増えただけだった。
小沢:年収200万円以下の貧困家庭が増えていて、どんどん格差が広がっています。景気というのは基本的に個人消費ですから、個人の収入が減れば景気がよくなるわけがない。
田原:非正規社員は4割もいる。
小沢:それが新型コロナで今どんどん解雇されているでしょう。財政健全化路線を金科玉条のように維持していたのではこの困難は打開できません。その考えは捨てていいと思います。たとえば、トランプ大統領は200兆円の財政出動をすると言っているけれども、われわれならそのお金で社会保障、暮らしのセーフティーネットを作る。年金でも農業や漁業の所得補償でも、個人の暮らしを守るためにその金を使う。そのためには赤字国債を発行したっていいと思うんです。
田原:09年当時の民主党でも小沢さんは同様のことを主張していた。でも民主党が事実上、分裂したことで民主党政権は3年3カ月で終わった。分裂させたのは検察。世の中的には民主党が下手だったとか言うけど、全然違う。小沢さんの秘書が逮捕されるなど、検察につぶされた。結局、不起訴処分で何もなかったんだけどね。なんで検察は小沢さんをつぶそうとしたんですか。
小沢:僕は官僚支配をやめて政治主導ということを一生懸命言っていましたから、「官僚制度を破壊する男だ」「許すな」と思われたんでしょう。その典型が検察だったんでしょうね。
田原:官主導から政治主導にしようという考えは正しいと思う。検察による小沢つぶしがなければ、小沢さんが総理大臣だった。何度も言うようですが、三度目の正直、期待しています。
小沢:まさに今がチャンスと考えています。頑張ります。
(構成/本誌・秦正理、亀井洋志)
※週刊朝日 2020年9月18日号より抜粋