今回の事件で、中国の人たちがインターネットに書き込んだ内容は、小泉元首相の靖国神社参拝をきっかけに盛り上がった反日運動とは大きく違っています。
当時は、ほぼすべてが「日本を許さない」という内容でした。中国政府にすれば、怒りが日本だけに向く分には怖くありません。
しかし、今回はざっと3分の1は冷めていました。
「あんな小さな島が返ってきても、おれの土地は少しも大きくならないよ」
「尖閣に使う知恵と時間があれば、物価と不動産価格の高騰をなんとかしろ」
これは中国政府にとっては恐ろしいことです。
中国は有力な国有企業の幹部が5千万~6千万円の年収を得る一方で、月2万~3万円で暮らす人も多い。この不公平社会の受益者たちは、格差を知りながら放置している自分たちの「ずるさ」を認識している。だから尖閣の問題をきっかけに、そこに火がつくことを恐れていたのです。
これはハンドルを誤れば政権を揺るがしかねない危険な問題です。火種は一刻も早く消さなければ──。中国の恫喝外交は、そんな中国の本気の危機感に裏打ちされたものだけに迫力が違う。それほど深刻でない日本はその剣幕におののいたに過ぎないのです。
実は、中国は裏で米国にも働きかけていました。