ところが、菅内閣から聞こえてきたのは、
「尖閣諸島には領土問題は存在しない」(仙谷由人官房長官)
「法に基づき粛々と対応していく」(岡田克也外相=当時)
という原則論ばかり。中国政府は、外務次官から外相へと格を上げながら抗議を繰り返したが、返ってくる反応は変わらない。
9月12日にはついに、副首相級の戴秉国・国務委員が、未明に丹羽宇一郎・駐中国大使を呼び出し、「賢明な政治判断」を促しました。これは、中国にすれば「SOS」を伝えたつもりだったのです。
ところが、菅内閣はこのメッセージも読み取ろうとしませんでした。
「こういう時間帯に呼び出したのは遺憾だ」
翌日の会見で仙谷氏がそう述べたときには、びっくりしたことでしょう。
この時点で、中国には日本向けの穏当なカードがなくなりました。
菅内閣は素晴らしい外交力ではなく、思考停止に陥ることで中国に音を上げさせたのです。
中国が解決を急いだ背景には、国内事情の変化があります。