■誰かに甘えることを学んで

 子どもに向ける感情の偏りが、もしも自分が育った環境にあるとすれば、どう修正すべきか。

 臨床心理士の角田春高さんは、人格形成が大事な幼少時代に、適切な愛情を受けられずに成長した人に向けた独自のメソッド「育て直し」を提唱する。

(1)生きている実感(2)安全・安心(3)信頼(4)言葉と共感(5)他者との交渉(6)対人関係を理解(7)畏怖心──といった課題を一つずつ順番にクリアさせていくもので、何歳からでも始められるのが特徴だ。

 角田さんはこう語る。

「毒親に育てられても、誰かに甘えるということを学べば毒親にはなりにくいです。大人になっても、やり直せる。甘えられる場所があることが大事」

 おとなの親子関係のカウンセラーとして活動する川島崇照さんは、子どもにけんかをふっかけたり、マウンティングをしたりする親について、こう分析する。

「おそらく劣等感が強くて学歴や職歴に敏感。子どもの価値が上がっていくと自分の価値がかさ上げされた気分になり、『そんな子どもを育てた私』となる。自己愛が強いタイプ」

 毒親に苦しむ子どもに対しては、

「『親から離れていいんだよ』と諭して『自分のやりたいように、思ったとおりに生きていいんだよ』と認識してもらうようにしています」

 カウンセリングでは二つのことを行うという。

「一つ目は責任・感情・価値観について境界線を引き直していきます。親が子どもに刷り込んできた責任や常識(価値観)のありかを変えることです。もう一つは、親がなぜそんな行動をとるのか、その心理背景を探ります。先の行動予測ができ、『転ばぬ先の杖』のようなものになります」

 頭でわかっていても心が足踏みをしてしまうような状態だとなかなか行動に移せず定着しない。恐怖心とも向き合いながら時間をかけて取り組むことが大切だという。

「毒親連鎖しない人なんてほとんどいないのでは。何年経っても一定数いて、それが連鎖しているから減らない。みんな育てられたように育てる。ただその過程でそれがおかしいと気づけるかどうか。そこが大きいのです」

(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2020年9月25日号より抜粋

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