■握手より笑顔で会釈

「国や都道府県が推奨したとしても、最終的に影響を与える範囲は市区町村や特定の地区レベルです。まずは地元の事業者や住民の意識に配慮する気持ちが大事です。そして、旅行をするのであれば、基本的な感染対策はもちろん、むやみに住民と話さないなどの注意も必要になるでしょう」(西川助教)

GoTo事業への心配は、感染拡大だけでなく、その手続き業務に対してもある。東京に住む女性(57)は、7月末の旅行の際には混乱を感じたという。

「当時は東京は除外だったので、旅館の予約を一度キャンセルして、神奈川県に住む同行者に予約し直してもらったらGoToの対象になりましたよ。今は宿の予約の際に東京都かどうかで入り口が違いますが、当初は案内も不十分で、現場も混乱していると感じました」

 今回急きょ決まった「東京解禁」でも現場が混乱しないか、心配は尽きないという。

 ただ、「感染防止対策を十分に行ったうえでの経済活性化」は、旅行を含めすべての場面でいま求められている。観光庁はホームページなどで「新しい旅のエチケット」「新しい旅のルール」を公開。「握手より、笑顔で会釈」「おみやげは、あれこれ触らず目で選ぼう」などの標語を掲げている。

 旅先で出会った人に地域の伝統を教わったり、居酒屋で地元住民と話す時間も旅の醍醐味の一つだった。だが、コロナ禍の旅行ではしばしお預け。一人ひとりがコロナ禍を自分事として捉えながら旅することが求められている。(編集部・福井しほ)

AERA 2020年9月28日号より抜粋

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