母親の自宅売却で入ったまとまったお金はいったいどこにいったのか。不審に思った佐知子さんは過去10年間の口座の取引明細を調べると、母親が倒れた後に毎年100万~300万円が引き出されていたことがわかった。兄に問いただすと、「知らない」の一点張りだった。

 佐知子さんは弁護士に依頼をし、家裁に調停を申し立てることにした。しかし、最後まで兄は引き出したことを認めなかった。裁判を終える条件として兄から届いたのは佐知子さんへの絶縁状だった。

 曽根さんは振り返る。「お兄さんが佐知子さんに謝罪をし、引き出した預金額も合わせて遺産分割協議ができればよかったのですが……。真実が通らず佐知子さんは疲れ果てたと言っておられました」

「夢相続」が扱った過去10年ほどの相談内容によると、もめた相手は「きょうだい」が最も多く、全体の67.3%だった。次いで「親」10.4%、「きょうだいの配偶者・おい・めい」8.8%、「異母きょうだい・先妻の子」5.8%、「おじ・おば」3.0%、「義理の父母」1.8%などだった。曽根さんは言う。

「きょうだいの一人が明らかに使い込んだ、というご相談は少なくありません」

(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2020年10月2日号

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