一人で親の介護をして、結局相続した財産は何もしなかった他のきょうだいと均等に──。そのような例は後を絶たない。さらにこんなケースを専門家が教えてくれた。
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介護に追われている間に、ほかのきょうだいに親の財産を使い込まれてしまうというケースがある。相続コーディネート業務を行う「夢相続」代表取締役の曽根恵子さんが事例を紹介してくれた。
佐知子さん(仮名)の母親は、70歳のときに脳出血で倒れて半身不随になった。夫を亡くして一人暮らしだったが、佐知子さんの兄夫婦は同居するつもりがなく、佐知子さんが介護することになった。
母親は自宅マンションを売却し、佐知子さんの住まいに近い賃貸の団地に引っ越した。売却を機に、兄が母親名義の通帳を預かった。一方、佐知子さんは母親の年金が入る銀行口座を管理し、そこから家賃と介護費用を捻出した。
佐知子さんはパート勤めをしながら母親の元に毎日通い、食事の用意など生活を全面的にサポートした。兄夫婦はほとんど顔を出さなかった。
14年後に母親が亡くなると、兄はこう切り出した。
「母の預金は1千万円しかないので、お前には400万円を渡してやる。俺が600万円。それでいいな」